『ケイコ 目を澄ませて』(2022年12月31日)、『どついたるねん』(2023年2月4日)からの流れで、クリント・イーストウッド『ミリオンダラー・ベイビー』(2004)。ロードワークのシーンはなかったものの、女子ボクサー×老トレーナーという設定は『ケイコ』と重なる。主人公のキャラもどことなく近い(素直で頑固)。
イーストウッドの監督作は、僕には世界観がしっくりこないことが多いのだけど、後半の展開は昔観たときより違和感がなかった。「命より大事なものはない(寿命は長いほどよい)」という現代の絶対的な社会通念に対する問題提起。『どついたるねん』も命をかけてリングに上がる話だったし、このストレートな問題提起は多くのボクシング映画が内包するものかもしれない。しかしそういう意味で考えると、『ケイコ 目を澄ませて』は命とボクシング(あるいは「日常性」と「躍動する生」)を二項対立的に位置づける映画ではなかった。