とりわけ最近、ツイッター上で「これだから日本は」などと日本を侮蔑するような言葉を多く見かけるようになった。大抵の場合、その意図も分からなくはないのだけど、日本の政府や日本の法律といった具体的なものを対象にするのならともかく、慣習や国民性といった輪廓の定まらないものについてまで安易に断罪的な言葉を発するのはどうかと思う。公衆便所に「世界平和」と落書きしても世界は平和にはならず、むしろより醜くなってしまうのと同様に、自分を含む多くの人が暮らす環境をくさすのは、世の中を良くすることには繋がらない気がする。

テレビで放送していた、宮崎駿『魔女の宅急便』(1989)を観た。20年以上ぶりだろうか。思っていたよりもずっと面白かった。プロジェクターを使い、80インチのスクリーンで観たことも関係しているかもしれない。物語の世界観と相まって、西洋のいくつかの都市を掛け合わせたような空間がみずみずしい。自分の知識から照らして、この密集した斜面にこういう形式の建物は建たないだろうと思ったりもするのだけど、むしろそうした空想性が画面に命を吹き込んでいるという気もする。

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理事をしている佐々木泰樹育英会で、建築系の奨学生たちが作った冊子『樹林会』vol.2をもらった(非売品)。各学生の作品や活動、エジプトへの研修旅行をめぐる記録や考察などがまとめられている。

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号外『建築と日常の写真』()をツバメ出版流通に発送。どこかで売れているらしい。この本はいろんな人から褒められて、自分でもわりと気に入っている。2017年の刊行以降に撮影した写真も溜まってきているので、そのうち『建築と日常の写真 2』を作りたい。しかしA4判中綴じだと、写真を大きく載せる/見るのにはよいものの、一般流通に向いているとは言いがたく悩ましい。

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年末(12月22日)に豊田市美術館のショップで予約購入していた『岡﨑乾二郎 視覚のカイソウ』(ナナロク社、2020年)が届いた。A4変型という大きさのハードカバーで、モノとしての迫力がある。同名の展覧会のカタログという名目だけど、岡﨑さんの仕事を網羅的に収録した作品集といってもよい。表紙の写真はHareza池袋の《ミルチス・マヂョル》(11月4日)。ブックデザインは、岡﨑さんと長年仕事をしてきた森大志郎さん。

とりあえずパラパラとめくってみたところ、松浦寿夫氏によるテキストで、『建築と日常』No.3-4()掲載の「建築は演算によってのみ出現する(演算過程においてしか、建築は存在しない)。」が参照されていた。下の写真は文献目録のページ。

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ポン・ジュノ『パラサイト 半地下の家族』(2019)を池袋HUMAXシネマズで観た。新型コロナの影響でガラガラかと思ったけど、意外と人がいた。
ここ最近、ポン・ジュノの映画をよく観ている。制作年順に『ほえる犬は噛まない』(2000)、『殺人の追憶』(2003)、『グエムル -漢江の怪物-』(2006)、『TOKYO!』(2008)、『母なる証明』(2009)、『スノーピアサー』(2013)、『オクジャ/okja』(2017)。『ほえる犬は噛まない』と『TOKYO!』は今一ぴんと来なかったけど、今日の『パラサイト 半地下の家族』も含めて、どれもエンターテイメントとして非常によくできていると思う。飽きさせず、引き込まれる。
『パラサイト 半地下の家族』は途中まで『しとやかな獣』(1962)を強く思い起こさせたけど、他の作品においても、たとえば黒澤明や今村昌平、新藤兼人など、かつての(リアリズム系の?)日本映画と似た雰囲気が感じられる。ただ、そうして貧困や社会問題、人間のドロドロした欲望や土着的なところを好んでテーマにする一方、構成は知的・技巧的で洗練され、良くも悪くも重たくない。扱っているテーマのわりに思想的な深みはあまりなく、そのぶんエンターテイメントとしての完成度が高い。だから僕個人にとっての特別な映画にはなりにくいけど(たとえばホン・サンスの映画のようには)、このレベルのエンターテイメントが世の中に普通にあることは豊かなことに違いない。上記の作品のなかでは、比較的初期の『殺人の追憶』に、作品がまだ完全に技巧で制御される前のなまなましさのようなものを感じた。

神奈川大学建築学科建築デザインコースが発行する『RAKU』、ひさしぶりにホームページを見てみると、2018年刊行のvol.14も全ページPDFで公開されていた(表紙画像をクリック)。

僕は私事によりvol.14で特集の編集担当を外れさせてもらったのだけど、僕のほうから声をかけたqpさんはまだエディトリアルデザインの仕事をしているらしい。特にvol.14はqpさんや学生たちと一緒にキャンパスの建築の写真を撮って回ったりして、手をかけた思い出がある。以下、刊行当時の日記。

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散歩がてら行った近所の古本屋で購入。書店のカバーが付いているのは発売されたばかりの新刊で、W・G・ゼーバルト『アウステルリッツ』(新装版、鈴木仁子訳、白水社)。

建築史家のアウステルリッツは、帝国主義の遺物の駅舎、要塞、病院、監獄を巡り、〈私〉に暴力と権力の歴史を語る。解説:多和田葉子

期せずして、なかなか良い組み合わせの本が(安く)買えたのではないかと思う。古本屋の醍醐味。

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TOTOギャラリー・間「増田信吾+大坪克亘展 それは本当に必要か。」を観た。増田さんには『建築と日常』No.5()で、アンケート「あなたにとって飽きない建築とはどういうものですか?」に回答していただいている。会期は3月22日までとなっているけれど、今の新型コロナの状況ではいつ休廊になってもおかしくないと思って早めに訪れた。
実作は観たことがないものの、僕が知っているなかでは長谷川豪さんの建築に印象が近い。慣習的な建築を構成する特定の要素に着目し、それを抽象化して変質させることで、建築の全体を成り立たせる。下階と上階の展示構成も、そうした建築のあり方に則したものだったと思う。つまり下階で各建築のコンセプトとなる要素を断片的に見せ、上階ではそれぞれの建築が位置づけられる環境まで含めて全体を示すというもの。

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「ハマスホイとデンマーク絵画」展で買ったポストカードと、『建築のポートレート』(LIXIL出版、2017年)に掲載した香山先生の写真。どちらもローマのサント・ステファノ・ロトンド教会で、構図も近い。建物は5世紀、絵画は1902-03年、写真は1967年。いつかこの葉書で香山先生に手紙を書いたらよいかもしれない。