潮田登久子写真展「永遠のレッスン」を横浜市民ギャラリーあざみ野で観た(〜2/26)。作者は1940年生まれで、桑沢デザイン研究所で大辻清司に学んでいるので、このまえ(2022年10月25日)の牛腸茂雄(1946年生まれ)のすこし先輩。様々な家の冷蔵庫を撮ったシリーズにとりわけ魅力を感じた。
仮に人/物/空間に写真の対象を分けるなら、やはり作者の資質は物に向いているのだろう。日常世界と物の世界との回路は大辻清司の写真と通じるところがありそうだけど(展覧会名の「レッスン」という言葉も大辻的だ。時代の表現や社会に向けたメッセージというものではなく、内省的な創作のあり方)、若いころに魅了されたのはロバート・フランクの『アメリカ人』(1958年)というから、少なくとも学生時代からの連続的な影響関係ではないらしい。文化や記憶を湛えたような物を撮り、その被写体には建物もあるので(『みすず書房旧社屋』幻戯書房、2016年。鈴木了二さんも寄稿している)、建築の人も取っかかりを得やすいように思う。建築はほぼ写っていないけど、「先生のアトリエ」シリーズは篠原一男設計の大辻邸(上原通りの住宅)での撮影。また、作者がかつて一家で間借りしていた世田谷の古い洋館(旧尾崎行雄邸)は、柴崎友香さんの『春の庭』(2014年)に出てくる「水色の家」を思い起こさせる。小説内の住人夫妻がともに写真を撮る人だったことも一因だろう。しかし本を読み返してみると、その他の部分は色々と異なっていた。
ギャラリー上階では「横浜市所蔵カメラ・写真コレクション展 写真をめぐる距離」が同時開催(〜2/26)。写真の誕生からその時々の多様なカメラを展示しつつ写真の歴史をたどる内容で、こちらも見応えがあった。