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ヤスパースの『哲学入門』(草薙正夫訳、新潮文庫、1954年)を読みかけのままにしていたら(10月23日)、この12月に『新版 哲学入門』(林田新二訳、リベルタス出版)が出版された。草薙訳とは文体がだいぶ異なるようだけど、この林田訳も新訳ということではないらしい。
付録の「哲学を学ぶひとのために」の訳は、『柳宗悦と民藝の哲学』(2018年7月17日)の大沢啓徳さんが新しく手がけられている。とりあえずその部分を読んでみると、書かれている内容についての評価はできないものの、歴史上の哲学者に対して批判であれ歯に衣着せぬ物言いで客観的価値を断言していく様(その行為が人類全体としての哲学のためになると信じて)に、柳宗悦の文と通じるものを感じる。
ヤスパースは日本の建築分野では白井晟一が戦前のドイツ留学中に師事したということ(だけ)で名前が出てくる。建築ではヤスパースと同時代で近い位置にいたハイデッガーのほうがよく取り上げられるけど、前に大沢さんから、ヤスパースを好む人はハイデッガーを好まずハイデッガーを好む人はヤスパースを好まない傾向があると聞いたのが妙に印象に残っている。