呉美保『そこのみにて光輝く』(2013)を家で観た。三宅唱『きみの鳥はうたえる』(2018年10月1日)、山下敦弘『オーバー・フェンス』(2018年12月29日)と同じく、佐藤泰志の小説が原作。知らない監督だったけど、調べたら山下敦弘と大学の同期らしい。佐藤泰志の小説を読んだことは相変わらずないものの、この映画も前掲2作と同じ小説家が書いた作品を元にしているということが確かに感じられる。物語自体が特に傑出しているという気はしないけれど、『オーバー・フェンス』のようなキャスティングのいびつさはなく、役者はそれぞれ好演していて、演出も的確なのだろうと思う。人間同士の関係やその場の空気がよく捉えられていると思った。函館の町の描写もたいへんよい。
佐藤泰志という人の小説はとりわけ映画化と相性がよいのだろうか(と書くと小説そのものは認めていないようだけど、小説が良かろうが悪かろうが小説の映画化がこれだけ連続して良い作品になっており、なおかつ独特のムードを通底させているということはなかなか珍しい気がする。特に成瀬巳喜男と林芙美子とか増村保造と谷崎潤一郎とか、特定の作家同士の結びつきではなく、それぞれが異なる監督の作品としては)。彼の小説を原作にした映画は4本あるらしく、こうなると初めて映画化された作品である熊切和嘉『海炭市叙景』(2010)も観たくなってくる。