NHK Eテレで2001年放送の「こころの時代」の再放送を観た。「言葉の力 生きる力」というタイトルで、福音館書店の編集者・松居直氏(1926-2022)の特集。篠原一男設計《白の家》(1966年竣工)の建て主であり、番組の収録場所もその家だった。

「話してみて、この人はおもしろい、と思いました。絵本を頼むときと同じで、相手の話と表情と気分で判断します。絵本の実績とかは関係ありません。その人がおもしろいかどうかだけです。篠原さんに絵本を頼むわけにはいかないから、その場で住宅を頼みました」(松居直)

戦後モダニズムの機能主義的な住宅に対して、篠原一男は「失われたのは空間の響きだ」と言ったけど、言語における同様の状況に対し、松居直ならば「失われたのは言葉の響きだ」と言ったかもしれない。言葉とは何より誰かが誰かに向けて話すものだという信念。単に去年亡くなった氏の追悼というだけでなく、痩せ細った言葉であふれる今の世の中に響いてくる内容だと思った。