深く考えるとは、平常よりも有益に考えるとか、正確に考えるとか、完全に考えるとかいうことではなく、それはただ遠く考えること、即ち思想によって言葉の自動作用から出来得る限り遠ざかることなのである。

  • ポール・ヴァレリー「レオナルドと哲学者達」1928年(『精神の政治学』吉田健一訳、中公文庫、2017年)

ヴァレリーがデカルトと重なるというのはこの辺のことだろうか。既成の言葉を疑い、自らの思想に根ざして深く考えること。そこで懐疑は不可欠だったにせよ、さらにその前提に、世界への信頼みたいなものがあったのだと思う。世界の存在を直観的に信頼すればこそ、それをめぐる既成の言葉への疑いが生まれる。