昨日の日記では自然に「氏」という言葉が出てきたけれど、「氏」は今の世の中でだいぶ価値を落とした言葉ではないかと思う。つまり慇懃無礼というか、まったく敬意を持たない相手の名前に対して形式主義的に空々しく「氏」を付けてみせるという用法がかなり目立つ気がする。その形式と実際のずれに嫌味を感じることが多い。昔、貴乃花が実兄である元若乃花のことをあえて「花田勝氏」と呼び、兄弟の不仲がワイドショーで騒がれたことがあった。今、インターネット上ではむしろそういう使い方のほうが大勢を占めてきた感じさえする。あるいは以前ならば呼び捨てでかまわなかった場面でも、今は敬称が求められるように世間の空気が変わってきたせいで、「氏」がいびつな状態で使われるようになったということもあるだろうか(たとえば一般人が政治家を語るときに「氏」は必要なのか?)。そもそも誰かに対して批判や非難をしたり、腐したり揶揄したりする言葉が世の中に圧倒的に多く顕在するようになったということが根源かもしれない。
関係ないが吉田秀和は相撲好きで、相撲についての文もたびたび書いている。