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これもiPhoneで撮った写真。右手前にザ・プリンス 箱根芦ノ湖(旧箱根プリンスホテル、設計=村野藤吾、1978年竣工)、奥に芦ノ湖とさらにうっすら富士山。朝日に照らされ、山と湖が金色に輝いている。水平垂直は一眼レフで撮る写真に近いけれど、画角の広さや明暗の捉え方(どちらかが完全に飛んだり潰れたりしない)はスマホならではかもしれない。ただ、iPhoneと一眼レフの両方で写真を撮ろうとすると、どちらにも集中できなかったり、自分の体験が疎かになったりしてしまう感じもあって、そこは本末転倒にならないように気をつけたい。そういえば昔、フィルムカメラとデジカメの両方を持ち歩いていた時期にも同じような感じがあった。両方の機材でとりあえず「押さえておく」という感じ。宿泊したザ・プリンス 箱根芦ノ湖の写真は、また日を改めて載せることにする。
ホテルをチェックアウトし、近くの旧箱根樹木園休憩所(設計=村野藤吾、1971年竣工)へ。もともとは天皇を招くためにつくられた建物のようだけど、今は完全に廃墟化している。
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学生の頃には廃墟に惹かれるところがあり(古代ギリシアやローマの廃墟ではなく、せいぜい軍艦島くらいのもっと身近な廃墟)、大学の設計課題でそういうテーマのものを提出したこともあった。しかし今はその興味はだいぶ薄れている。「生きられた家」みたいなものには変わらず関心があるけれど、それと廃墟とは僕のなかで一線を画している。自分が年を取ったことで、朽ちていくものに目を背けたい意識が生まれてきたのだろうか。あるいは若い頃は単に空間の機微を読む力がなく、廃墟という現象のインパクトを求めていたのかもしれない。
それよりも建物がある「箱根九頭龍の森」の芦ノ湖沿いの遊歩道を歩く体験がすばらしかった。天気がよかったのも大きいだろう。神社の参道のようなものでもあるのだけど、単なる自然の道ということではなく、日本の地域性を超えて、ジャン・ルノワールの『ピクニック』(1946)やエリック・ロメールの『クレールの膝』(1970)などのバカンス映画に連なるような人間の文化を思わせる。
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その後、ロープウェイで大涌谷へ。写真のテーマになりそうな場所。もしかしたら小学生のときに来たかもしれない、という思いが現地に降り立ってから浮かんできた(6年の修学旅行が日光で、5年の遠足が箱根だった気がする)。硫黄の匂いが遠い記憶を呼び覚ましたのか。しかし同じ匂いの別の場所と混同している可能性もある。
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大涌谷からまた芦ノ湖畔へ戻り、今度は遊覧船に乗った。
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船が着いた先で遅めの昼食をとって、だいたい今回の日程は終わり。本当は箱根湯本の駅のほうまでハイキングとして歩くつもりだったけど、予定よりかなり時間が過ぎていたし疲れもあったので、駅までバスで戻ることにした。箱根は観光地として魅力ある多様な要素が集合している一方、思っていたよりもだいぶスケールが大きく感じられた。調べてみると箱根町の面積は92.86㎢で、同じ神奈川県の鎌倉市が39.67㎢、葉山町が17.04㎢だから、やはりだいぶ広い。