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金沢市立玉川図書館の近所にある《金沢市西町教育研修館》(旧石川県繊維会館、設計=谷口吉郎、1952年竣工)。RC造だが、金沢の多雨を考慮して勾配屋根が載せられ(この日も降ったり止んだりの変な天気だった)、柱もタイル貼りの外壁の外には露出させず、窓にはすべて庇が付けられている。1階がセットバックしているのは冬の積雪を想定してとのこと。それぞれのデザインは機能主義的に説明されつつも(谷口吉郎「雨と糸」『建築文化』1953年5月号)、その総体としての外形もまた魅力的なプロポーションを備えている。
勾配屋根は一見して日本建築との関連を思わせるけれど、上記の解説文で「スイスのように雨の多い國では、鐵骨や鐵筋コンクリート構造のモダーンな小學校に、わざわざ木造の勾配屋根を取りつけている所さえある」と書かれてもいるので、金沢の風土は意識しているとしても、別段「日本的なもの」を狙っているわけではないのかもしれない。この外観はどことなく大江宏による「国史館」計画のスケッチ(1938-41年頃)を思い起こさせる(2015年3月13日)。『建築と日常』No.3-4の購入特典として制作したポストカードに用いたスケッチで、それは当時何人かの人から、アルド・ロッシのスケッチによく似ていると言われた。
内部は昔は茶室や露地、撞球室などもあったようだけど、今はだいぶ変わっているらしい。ホールに吊された折鶴型の照明は竣工当時からのもの。