特別公開中の農林水産省三番町共用会議所別館(旧農林省大臣公邸三番町分庁舎、設計=大江宏、1956年竣工)を見学した。『建築と日常』No.3-4()の「現在する大江建築」(→誌面PDF)にはなぜか載っていない建物。旧山縣有朋邸の庭園に向かって開かれ、細い丸柱と薄いスラブの秩序が全体を規定している。その外観はスレンダーできれいと言えばきれいだけど、その後の大江建築と比べると、形式性の度合いが強いように思える。庭に面する東面と南面ではプランニング上の条件は異なるはずなのに同等の柱廊が巡らされているし、大臣公邸といういかにも機密性が求められそうな建物で、内部の間仕切り壁をまたいで外廊下から各室を覗けてしまうのはいかがなものかという気もする。2階の凝った造りの和室から庭園を眺めようとしても、その間に座敷とほぼ同じ高さの土足の柱廊を挟んでいるのは、内部と外部(建築と庭園)の親和性を意図したデザインとは言いがたい。大江宏においてこうした建築の形式性の優先が、同時期の《法政大学55/58年館》を経て、より体験のなかで現れてくる空間の重視に移行していくと言えるのかもしれない。以下写真2点。