以前(2014年1月20日)も抜粋したことがあるテキスト。こういう視点も「平凡建築」を考える上で重要だと思う。

一見、様式建築よりも単純化され、誰でも容易に設計できるように思われるが、実はモダニズム建築は建築の歴史上設計が最も難しい建築のひとつで、ほんとうは比例感覚に優れた天才的な建築家だけしか美しく設計できない。一定の形式や伝統的細部や装飾技芸などの助力がないため、一般建築家が設計したモダニズム建築はただ安っぽく見苦しいだけの結果に終わるからである。大半が一般建築家によって建てられる運命にある都市の建築が、急速に魅力を失っていったのはむしろ当然であった。

  • 桐敷真次郎『近代建築史』共立出版、2001年、p.258

平凡が人間の暮らす環境をつくっている。だからその平凡を政治なり啓蒙なりによってより良くしていこうとする考え方がある一方、あえて全体的により良くしていこうなどとは思わず、「みんなが夢中になって 暮らしていれば 別に何でもいいのさ」(フィッシュマンズ「幸せ者」)というような考え方があり、さらにそうやって夢中になって暮らした結果、その環境がより良くなっているはずだという考え方がある。