G・K・チェスタトン『木曜の男』(吉田健一訳、創元推理文庫、1960年、原著1908年)を読んだ。前に読んだ(5月26日)『正統とは何か』(福田恆存安西徹雄訳、春秋社、1973年、原著1908年)を書いた作家による長編小説。思想がそのまま小説化されている感じがして面白い。じつはいちばん大事そうな最後の問答の意味はよく理解できずにいるのだけど、全体的なテーマはフィッシュマンズの歌詞「この世の不幸は全ての不安/この世の不幸は感情操作とウソ笑いで/別に何でもいいのさ」(「幸せ者」作詞・作曲=佐藤伸治)に通じるものではないかと思う。実体は何もないにもかかわらず、理性の働きによって不安の感情が生まれ、人は不幸になるということ。「狂人とは理性を失った人ではない。狂人とは理性以外のあらゆる物を失った人である」(『正統とは何か』p.23)。