小平市平櫛田中彫刻美術館に行った。どちらかというと大江宏設計の田中の旧宅《九十八叟院》(1968)を目当てにしていたのだけど(隣接する現在の展示館は1993年に大江新の設計で竣工)、ほとんど知らずにいた田中の彫刻が思いのほかよかった。物語がある。

平櫛田中が100歳のときに20年後の彫刻用に取り寄せたという樹齢推定500年のクスノキ。

私はいつも現状を見ることが歴史だろうという感覚があるわけですよ。それは自分がもの[2字傍点]をつくっているせいで、特にそれが強いんだと思うんですけれどもね。だから現在はすべて歴史的なものの一つの反映というか、いまを見れば、何も時間的に遡って昔のことを見なくたって、そこに歴史が全部ある。たとえば文明というものも、地球上にあらゆる文明がある。それは全部がそれぞれにバナキュラーな要素で、一律均質には全然考えられないようなかたちで存在する。それが歴史そのものだというとらえ方ですね。
───大江宏「父と子と」聞き手=長谷川堯、『建築をめぐる回想と思索』新建築社、1976、p.46