芝浦工業大学で八束はじめさんの退任記念講義を聴いた。「Retrospective 八束はじめ 1967-2013」という題目で、大学入学以降のご自身の足跡を、学生時代/建築家時代/教員時代の3期に分けて語られた。僕としては、そうした歩みを踏まえた上での、その集大成となるような建築なり都市なりの考えをうかがってみたかった気もするけれど、これはこれで八束さんらしさを感じさせる興味深い最終講義だった。
とりわけ特徴的だったのは、最後の教員時代についてのパートだと思う。八束さん自身の活動を軸にするのではなく、研究室の学生たちの卒業設計や卒業論文修士論文を時系列に細かく列挙しながら教員時代を辿っていくという構成だった。個々の設計や論文の説明では、それぞれの学生の進路やキャラクターなどにも触れながら、会場にいるだろう卒業生たちとの同窓会的な雰囲気を醸しつつ、しかし全体として俯瞰して見ると、たしかに八束さんならではと思える明快な活動の軌跡が描かれている。個々の学生に接する八束さんの教育者としての態度と、高い密度で統制された研究室の活動との二面性がよく表れていた。