市ヶ谷の法政大学で、槇文彦×富永讓モダニズムを巡って」を聴講。昨年11〜12月の連続講演会(富永讓陣内秀信妹島和世佐々木睦朗/坂本一成/渡邉眞理/隈研吾伊東豊雄)の締めくくりとして位置づけられたもの。しかし、本にまとめることが前提にされているためなのか、予定されたプログラムが形式的に進んでいくような印象で、あまり議論を深めようとする意図は感じられなかった。大学という場で、富永さんの退任を記念して行われていることだし、このお二人でモダニズムというテーマなのだから、僕としてはもっと学究的で射程の長い、核心に迫ろうとするような対話が見たかった。
富永さんは、若いころに世の中の流れから外れてでも真摯な勉強をしておくことが、その人の後年の知的体力を決定するということを仰っていたし、ご自身でも、大学を辞めた後には自分の集大成となるようなものを書きたいということだった。また、槇さんは言うまでもなく、80代の半ばになっても強固で明晰な言論活動を続けられている。現在の状況に対する倫理的な問題意識も強いお二人なので、そうした力や熱が集中するような場のディレクションがされるべきだった。もったいないという思い。