ルイス・カーン研究連続講演会「いま語り継がれるカーンの霊気[ルビ:aura]」(9月16日)の第4回をzoomで聴講(第2回と第3回も聴いている。内容自体はすでにおおよそ知っているはずの香山先生のお話がやはりすばらしかった)。今回は西沢立衛さんと塚本由晴さん。ほとんどがカーンの言葉についての話で、カーンの建築には触れられなかったのが印象的だった。
カーンにおける「元初」は、既成のあり方を疑って本質を問うという意味で、デカルト的な近代精神に連なる思考であり、機能主義の根本だとも思う(そもそもの学校の機能とは何か?みたいな問い)。だから「元初」が歴史や共同体を超越した普遍性を指す概念だとすれば、文化や伝統や慣習も克服すべきものに思えてくる(それは理屈だけで見れば現代のグローバリズムと親和性が高い)。けれども実際のカーンの建築のかたちは、インターナショナルなモダニズムというより、西洋建築の古典的な伝統に根ざしているように見える。このあたりの言葉と建築の「ずれ」のあり方に、建築にとって重要なものがある気がする。