ルイス・カーン研究連続講演会「いま語り継がれるカーンの霊気[ルビ:aura]」(TIT建築設計教育研究会)の第1回をzoomで聴講。志水英樹さん(1935年生まれ)と工藤国雄さん(1938年生まれ)はどちらも東工大出身でペンシルベニア大学に留学後、ルイス・カーンの事務所に勤めている。
いろんな話題が詰め込まれていたけど、工藤さんが言われていた分解批判、つまり部分的な知識や認識を積み重ねていってもカーンの本質は掴めない、むしろ「1を知って10を失う」みたいなことになってしまうという話に興味を惹かれた。それはたとえば外山滋比古が「分析の原理のみひとり先行して統合の原理はなおざりにされているのが近代文化の特性である」(2017年5月1日)と書くことと響き合うだろう。対象を分解せずに全一的なまま直観するということ。
それについて最後の質疑応答の時間で、工藤さんにzoomから質問をした。

カーンのエッセンスには知的な分解では到達しえないというお話が興味深かったです。それは建築に限らず傑出した作家には共通のことにも思えますが、そのなかでもカーンは特別ということでしょうか。たとえばフランク・ロイド・ライトや篠原一男という建築家と比べるとどうでしょうか。

比較としてライトを挙げたのは、カーンとともにアメリカの代表的な建築家であり、やはり建築に理知的なものを超えたauraがあると言われるから。篠原一男は今回の会場(《東京工業大学百年記念館》設計=篠原一男、1987年竣工)や工藤さんが東工大出身ということもあるけど、やはりカーンと同じく、高度に幾何学的な自律性・完結性を持つ建築だから。工藤さんの認識がうかがえてよかった。