明日から各地の映画館でエリック・ロメールの特集上映が開始されるのだが、それとまったく同じラインナップで同時発売されたブルーレイボックスを買ってしまった。映画館の窮状が日々伝えられるなかでいくぶん後ろめたい。通常、新作ならば公開と同時にソフトが発売されるということはないはずだけど、今回は判断を迫られる感じがあった。価格はボックスの1と2合わせて、税込27,442円(割引価格)。収録されているのは長編が5本、55分の中編が1本、11〜23分の短編が7本で、長編3本以外は未見。自宅でプロジェクター&スクリーンで観られることや、都心の映画館までの移動のこと(交通費含む)も考慮し、思い切って買うことにした次第。僕にとってそれだけロメールが重要な作家だということでもある。
ロメールには建築をテーマにしたドキュメンタリーの仕事もあるようだけど、そのことが僕が興味をもつロメールの作品性と具体的にどう関係するのかは定かではない(長編作品でも有名な建築が出てきたりはする)。作品世界を俯瞰して捉え、それを幾何学的に構成して成り立たせるという映画のあり方に、建築との共通性が見いだせる気はするけれども、そういうつながりだろうか。人間の生を支えるものへの関心。YouTubeにアップされている下の動画はフランス語の音声から自動的に字幕が作成でき、さらにそれを自動翻訳で日本語字幕に変換できる。

長編第1作の『獅子座』(1959)はその後の長編とはだいぶ雰囲気が異なるだろうけど、都市(パリ)のひとつの側面が切実に表現されていて、建築系の人にも勧めやすい。(たとえば同時期に同じくパリを撮ったゴダール『勝手にしやがれ』ではなく)この映画を観て、あ、ロメールは味方だと思ったような記憶がある。その後、数多く作られることになる「バカンス映画」に先がけ、バカンスをネガとして描いていることの意味は大きい気がする。
以下、ふたつのボックスに含まれるタイトルのメモ(年代順で、短編・中編、ドキュメンタリーが混在)。

  • 『紹介またはシャルロットとステーキ』(1951)
  • 『ベレニス』(1954)
  • 『ヴェロニクと怠慢な生徒』(1958)
  • 『獅子座』(1959)
  • 『モンソーのパン屋の女の子』(1962)
  • 『シュザンヌの生き方』(1963)
  • 『パリのナジャ』(1964)
  • 『コレクションする女』(1966)
  • 『ある現代の女学生』(1966)
  • 『モンフォーコンの農婦』(1967)
  • 『モード家の一夜』(1968)
  • 『クレールの膝』(1970)
  • 『愛の昼下がり』(1972)