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川崎大師からの帰り道、見覚えのある建物が視界に入ったので立ち寄ってみた。《川崎市河原町高層公営住宅団地》(設計=大谷幸夫、1972/74年)だった。以下、写真7点。
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それぞれの廊下を挟んで向かい合わせの東西2棟を末広がり(逆Y字型)に構成することで、下層部分の住戸に南面の開口をもたらしつつ、地上レベルにオーディトリアム形式の広場を内包させている。大胆かつ細やかで衒いのないデザインは社会の意志と建築家の思考がダイレクトに連動しているようで爽やかな印象を受けた。
「東の河原町、西の基町」と言われるように、この印象は大髙正人による《広島市基町団地》(1969-78年)(2016年10月25日)とも共通するように思う。河原町の逆Y字型も基町の屏風型(ジグザグ配置)も、奇抜な外形だけ見ると当時の楽観的な未来主義のように思えてしまうけど、実際には戦後の住宅不足と高密度団地の必要という差し迫った現実に対応するデザインだっただろう。一般に団地で各住戸を南向きにしようとすると東西に細長い片廊下型の住棟を平行配置することになるけれど、日照の確保のため、高層であればあるほど隣棟間隔を広げないといけない。それに対して住戸を東/西向きにすれば、南からの日照は得られないものの、敷地を画一的ではなく有効利用できる、という前提からの独創的なデザインだと思う。
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