大田区南久が原にある昭和のくらし博物館で、「高野文子の描く 昭和のこども原画展」(〜12/24)と「楽しき哀しき昭和の子ども」展(〜2018/3/31)を観た。高野さんの展示を目当てに行ったのだけど、他の展示やこの場所自体も印象深いものだった。設立まもない住宅金融公庫の融資を受けて1951年に建てられた木造家屋を、そのまま博物館にして見せている。登録文化財ではあるものの、一般的な歴史的建造物に比べれば古くないし(1996年まで住居として使用)、どこにでもありそうな平凡な建物なので、そのぶん強く懐かしさを感じさせる。ここを訪れるのは今日が初めてでも、どこかで確かに経験したことがあるはずの空間。こうしたリアリティをことさら感じさせるのは、この建物が移築ではなく元の場所に立っており、なおかつここに長年暮らした住人(生活史研究者の小泉和子氏)が館長として設立、運営に当たっているためでもあるかもしれない(建物の設計者は父である建築技師の小泉孝)。言わば生きられた家としてのオーラが持続しているのではないかと思う。高野さんの原画の展示も小規模ながら見ごたえがあった。「わたしは漫画を描くときに、自分の体になじみのあるしぐさを、主人公にさせてしまうくせがあります」というような高野さんの言葉()を読むと、高野さんの漫画にも「どこかで確かに経験したことがあるはずの空間」の再生という側面があることが分かる。以下、写真2点。