わりと混んだ電車の中。イヤホンから流れてくる音量が大きくて、すこし小さくしたほうがいいかと思いつつ、その動作をするには体勢が若干窮屈だった。イヤホンは耳の穴をすっぽりふさぐタイプだから、まあ音漏れは大丈夫だろうと思ってそのまま音楽を聴きつづけた。フィッシュマンズの最後のライヴを収録したアルバム『98.12.28 男達の別れ』(1999)。8曲目の「IN THE FLIGHT」の高音で伸びるところで不意に忌野清志郎を感じた(例えば同じく歌詞に「空」という言葉を含む「ヒッピーに捧ぐ」や「うわの空」)。仮にその直感が確かなものだとして、清志郎からの影響があるのだとすると、その影響がフィッシュマンズ佐藤伸治)にとってのキャリアの初期にではなく、すでにバンドとしての確固たるオリジナリティを獲得した最後期に表れているのが興味深い。あるいは清志郎の音楽がそれだけ根本にあったのか、あるいはその時期にあらためて必要とされたのか、あるいはあるいはと、考えるに足る問題だ。