引き続き東京国立近代美術館のミュージアムショップで売れ行きがよいらしく、ショップを運営するナディッフから『建築と日常』各号の追加注文があった。これで「日本の家」展の会期中3度目。

ちょうど自転車で広尾方面に行くつもりだったので、合計数十冊の雑誌をリュックでかついで、ナディッフの本店に直接持ち込んだ。その後、OFS Galleryで菊地敦己・服部一成・葛西薫「三人の装丁」展(〜9/24)、Takuro Someya Contemporary Artで岩井優「親密の遠近法」展(〜10/14)を観たのち、都立中央図書館にて『建築と日常』の次号に関する調べもの。
「三人の装丁」展では、服部さんのデザインによる『建築家・坂本一成の世界』()が展示および販売されている。たまたまなのかどうか隣り合っている中平卓馬さんと坂本先生は、おそらく本人同士の直接的な接触はなかったと思うけれど(多木さんを介してということもたぶんないだろう)、ともに自身の作品から世俗的な意味を消すことを執拗に追求したという、思想的・時代的共通性が見いだせる。


「親密の遠近法」展はタイとカンボジアそれぞれで制作されたふたつの映像作品。一方は集団でバイクを洗い、もう一方はビルを洗う。どちらも複雑な社会的背景を抱えた状況を題材にしているようだけど、マルチスクリーンで映される映像自体は、リアルなドキュメンタリー風というより、人びとのごくごく世俗的な営みがあくまで抽象的かつ美的に構成されている。そうした対比を含む作品の性質は、汚れという具体的なものと清潔さという観念的なものとのあいだを行き来する洗浄という行為の性質と、どこか重なってくるような気がした。掃除はそれ自体なにも生産しないけれど、例えば試験の前になると部屋の掃除をしたくなるというように、物理的に物が片づくことと精神的に頭がすっきりすることとが密接に関わり合っているというのがなんとなく面白い(それが「浄化」という言葉になると、そうポジティヴに面白がってはいられない響きがあるけれど)。