古書で2000円ほどで購入。『A Vision of Paris』写真=ウジェーヌ・アッツジェ、文章=マルセル・プルースト、訳文=伊藤逸平、発行所=東京写真専門学院出版局、1976年(原著1963年)。下記、編者のアーサー・D・トロッテンバーグの言葉から。青山ブックセンタートーク)でも話題になった『建築家・坂本一成の世界』の作り方や、いま進めている別の書籍の形式とも関連するような話。

ある写真家の作品と、彼にとっては未知のある小説家の作品とを組み合せた。一見ちぐはぐな抱き合せではないかと思うかもしれないが、決してそのような浅薄なものではない。[…]本書の文章と写真の配列は思うところあって、ことさらたっぷりと遊ぶことにした。写真と文の概念(イメージ)をピタリと合せたら却って貧しい効果しか期待できないのだ。

しかし、この編者の意図が本当に達成されているのかどうかは疑問がある。飛び抜けて長大とはいえ、やはり一つの小説だけ(箴言集のようなものならともかく)から文を抜粋して個々の写真と組み合わせ、200ページを超える本を詩的な緊張感で覆うというのはかなり困難なことだと思う。あるいは、もともとしっかりプルーストを読んでいる人ならば、何気ない一節のなかにもアッジェの写真と響いてくるものが感じられるということがあるのだろうか。訳文は英語からの重訳ということもあって、フランス語の原文が与える印象とはそれなりに異なっているだろうことは予想できる。