批評家たらうとするもののけつして頼りにしてはならぬもの──一に知識、二に體驗、三に獨創性。
[…]常識、常識、常識──これ以外に頼りになるものがあらうともおもはれぬ。

  • 福田恆存『否定の精神』銀座出版社、1949年(『福田恆存評論集 第十六巻』麗澤大學出版會、2010年、pp.57-58)

本当にそうなのだろうなと思う。
別冊『多木浩二と建築』(2013)で一人の人物による建築批評に焦点を絞っていたのをもっと広い範囲で捉えてみようとしたのが号外の『日本の建築批評がどう語られてきたか』(2013)だった。これを足がかりに日本の建築批評をめぐって本でも作れないかと考えていた。しかしいくつかの出版社に話をして反応が鈍かったこともあり、なんとなくそのままほったらかして2年経ってしまった。モチベーションが上がらない理由はいくつか挙げられそうだけど、そのうちのひとつとして、批評の全体を記述しようとするのは常識の全体を記述しようとするように難しいということがある。