あるインタヴュー原稿をまとめる作業をしている。しかしなかなか捗らない。その一因として、インタヴュイーの話し方があると思う。実際に伺った話自体はとても分かりやすく、また心に響いてもきた。ただ、それはあくまで特定の話し手が特定の聞き手に話しかけるという、特定の対話のなかでの言葉なのだと思う。疑問形や問いかけや独白の多用、感情を込めた同意の表現、同じ内容の言い換えや反復といったレトリックは、その場で話をしているぶんには生き生きとした密度の高いコミュニケーションを成立させる。けれどもその場から切断して、文字に抽象化して誌面に定着させようとすると、話し言葉をそのまま文字にしただけではうまくいかない。むしろ有機的な秩序が破綻して、部分がバラバラになってしまう。対話の場での実質を誌面で復活・再生させようとすると、なんらかそのための構成の手法が求められる。