『建築と日常』次号のための勉強。以下、香山壽夫『ルイス・カーンとはだれか』(王国社、2003)で引かれているカーンの言葉。1973年の講演から、共同性(commonality)について。

「ひとりの人間の、最も優れた価値は、その人が自分の所有権を主張できない所にあると思います。私の方法は、まさに個人的なもので、それをあなたが真似したら、百遍死ぬようなものです。何故なら、自分で自分のことを真似することだってうまくいかないわけですからね。自分のやることだって、そんなに不完全なわけですから。
 しかし、あなたが、行うことの内で、あなたに属していない部分は、あなたにとって最も貴重な部分で、それこそ、あなたが、真に捧げることのできるものです。何故なら、まさにそれこそ、あなたの内で、より良い部分だからです。それは、誰もが用いることのできる宝物です。たとえその宝物を用いるのはあなたであるかもしれませんが、あなたがまさに、全ての人に属する普遍的な共同性の一部であるからこそ、あなたはそれを用いることができるのです。」(p.197)

ここで言われている「共同性」は、特定の地域や共同体の固有性を保障するものではなく、むしろ人類全体のグローバルな普遍性に根ざしている。カーンの言葉は論理よりも信仰に近い。持続するものへの信仰。そこから次のような、過去/現在/未来の時間意識も生まれてくるのだろう。

あったものは、常にあったものである
今あるものも、常にあったものである
いつかあるであろうものも、常にあったものである(p.207)