『建築と日常』建築講座2014の第1回が無事終了(写真=山口伊生人)。受講者は12名で、会場の空間的にも講義や議論の進行的にも、ちょうどいい人数だったのではないかと思う。12名のうち今回の講座以前からの知り合いは、半分の6名だった。この比率も、親密さと開放性のバランスみたいな意味で、よかったかもしれない。知り合いばかりでも馴れ合いになってしまいそうだし(知り合いでなかった人は居づらくなってしまう)、初対面の人ばかりでもぎこちなくなってしまいそうな気がする(興味の方向性もいまいち掴めない)。
ただ、受講料が1人1回2000円でこの規模というのは、今回のようにある程度講義の素材がまとまっているならまだしも、準備の手間やなにかも考えると、自立して運営していこうとするには色んな面で検討が必要なように思う。とりあえず今のところ僕はそういった方面を追求するつもりはないけれども。

次回予告
第2回/9月6日(土)/西洋建築史:中世(ビザンティン〜イスラム〜ロマネスク〜ゴシック)

  • 議論のトピック:コミュニティ
  • 予習テキスト:山本理顕「『地域社会圏』に住みたい」(『地域社会圏主義』INAX出版、2012)

『建築と日常』建築講座2014 http://kentikutonitijou.web.fc2.com/lecture/lecture2014.html

次回、西洋建築史の中世では宗教や共同体というものが重要な意味を持ってくるので、それらを現代と絡めてディスカッションをしてみたい。コミュニティデザイナーの山崎亮氏は、「コミュニティデザインの源流」という雑誌連載(『atプラス』18号、2013年11月〜)で、中世主義者であるジョン・ラスキンを「師匠」、ウィリアム・モリスを「兄弟子」と呼んで論じている。そのあたりも現代との接点のひとつになるかもしれない。
予習テキストの執筆者である山本理顕さんは、僕にとっては《熊本県営保田窪第一団地》(1991)と、同時期・同規模の坂本一成設計《コモンシティ星田》(1991/92)とを対比させて考えると捉えやすい。お二人とも現代社会に批判的なスタンスで活動しているところは共通するけれど、山本さんが現代社会の問題を先鋭的に抽出して、それを乗り越える新しいモデルを計画するのに対し(「『地域社会圏』は『1住宅=1家族』というモデルに替わるまったく新しい生活のし方の提案である。」前掲テキストより)、坂本先生は「まったくの新しさ」へは向かわずに、現実の世界をつくっている様々な(些末な)ものごとを基本的に認めながら、それらとの関係のなかに批評性を見いだそうとする。そこがお二人の活動を隔てる決定的な違いではないかと思う。