例の講義の第13回が終了。先週やり残した「日本建築の空間と表象」関連では、『方丈記』と『ベルツの日記』を紹介しつつ、ちょうど先週ネットで公開され始めた関東大震災の映像を流したりした。いよいよ次週最終回。

ゆく河の流れは絶えずして、しかももとの水にあらず。よどみに浮ぶうたかたは、かつ消えかつ結びて、久しくとゞまりたるためしなし。世中[よのなか]にある人と栖[すみか]と、又かくのごとし。
───鴨長明『新訂 方丈記』市古貞治校注、岩波文庫、1989、p.9(1212年)

日本人とは驚嘆すべき國民である! 今日午後、火災があってから三十六時間たつかたたぬかに、はや現場では、せいぜい板小屋と稱すべき程度のものではあるが、千戸以上の家屋が、まるで地から生えたように立ち並んでいる。[…]かれらの顔には悲しみの跡形もない。まるで何事もなかったかのように、冗談をいったり笑ったりしている幾多の人々をみた。
───エルウィン・ベルツ『ベルツの日記 第一部 上』トク・ベルツ編、菅沼竜太郎訳、岩波文庫、1951、pp.38-39(明治9/1876年12月1日)

『ベルツの日記』の該当部分を読んでから関東大震災の映像を見ると、大惨事のなかで何人か笑っている人がいるのが目に付く。