このまえAmazonマーケットプレイスに出品した『多木浩二と建築』の売れ行きが意外とよい(5月21日)。半月ほどで9冊売れた。送料が250円プラスされるのだけど、それでもAmazonの便利さを優先させる人がある程度の数いるということになる。当然『多木浩二と建築』以外の号も売れるに越したことはなく、『窓の観察』も出品してみた。

窓の観察

窓の観察

Amazonに個別の商品ページがない物を出品するには「大口出品者」になる必要があり、その登録料に月額4900円かかる。一方、商品ページがある物については「小口出品者」(登録料無料)としても出品できる(その代わり1回の販売につき、Amazon側の取り分が大口出品者よりも100円多くなる)。もともと『多木浩二と建築』も『窓の観察』も商品ページはなかったわけだけど、このまえの日記で書いたとおり、『多木浩二と建築』はどこかの大口出品者が商品ページを作ってくれた。それで僕は小口出品者に登録し、便乗して出品することができた。『窓の観察』は誰も商品ページを作ってくれなかったけれど、調べてみるとちょうど今、大口出品者の登録料が3ヶ月無料キャンペーン中だったため、僕自身が大口出品者となり、商品ページを作成して商品を出品した。
こうなると、まだ在庫がある『建築と日常』No.2も出品したくなる。しかし『多木浩二と建築』と『窓の観察』が出品できたのは、あくまでISBNを取得していたからであり、それ以前のISBNを付けていない号は出品できないらしい。AmazonではISBNが流通する1980年代以前の古い本も見かけるけれど、どうもそれとはまた別の扱いになるらしい。こんなことならば『建築と日常』も最初からISBNを取得しておけばよかったかもしれない。Amazonでの販売は、『建築と日常』を創刊するときにも一度検討したことがあった。ただ、そのときはマーケットプレイスのことは頭になく、あらかじめAmazonの倉庫に商品を預けておく「e託販売サービス」なるものを想定していた。しかしこれは年会費9000円+掛け率60%で、(お金のことだけを取ってみても)決してよい条件ではないので、時期尚早と判断したのだった。

マーケットプレイスでの出品は、注文があればその都度梱包して発送しなければならない手間はあるけれど、それは別に苦にならない。Amazonでよく苦々しく語られる「在庫切れ」という状態もない。送料負担でもかまわない人には買ってもらえたらいいし、売れなければ売れないでこちらにマイナスはない。僕にとっては思いのほか好都合なシステムだった。
『窓の観察』は『建築と日常』でしかできないような、絶妙な組み合わせとバランスの本になったと思うのだけど、絶妙すぎて、それこそジャンルがよく分からないということが販売時の足枷になっている気がしていた。イベントなどで実際に手に取ってもらえるような時にはめざましい売れ行きだった(2012年11月18日)。けれどもそれ以外、書店に並べて売られるときには、建築なのか写真なのか文芸なのかサブカルチャーなのか、これぞという棚の位置が定まらずに、ポテンシャルを十分に発揮できていないように思える。今回のAmazonへの出品は遅きに失したものの、書店の棚とはまた違ったネットワークのなかで、ひとつの出会いの場として機能してくれたらありがたい。