空族(くぞく)制作/富田克也監督『サウダーヂ』(2011)をオーディトリウム渋谷で観た。自主制作でこういう社会派なテーマだと、対象との距離のとり方が難しそうな気がしてしまうけど、そのへんは見ていて爽やかな印象さえあった。制作者自身が対象と一体化して熱を持ちつつ、映画としての客観性に裏打ちされている。サウダーヂ特集の『nobody』36号(sold out)掲載のインタヴューで、監督が本作においてエドワード・ヤンの群像劇を思い浮かべていたと言っているのが腑に落ちる。登場人物の個性がそれぞれの共同体や状況のなかで描かれながら、より引いた視点で、それら個々の存在が大きな関係のなかに位置づけられている感じ。
ただその意味で、映画の終わり方はちょっとどうかなと思った。『映画空間400選』にも寄稿していただいた廣瀬純さんの評論「OUTRA VEZ..., MAS!」では、そのラストが永遠回帰の象徴のように捉えられているけれど、僕にはやはり映画のための「そういうオチ」のように思えてしまった(たとえば『牯嶺街少年殺人事件』(1991)がそのラストをまさに出オチ的にタイトルで示し、そこに物語を収束させつつ、それでも作品に従属したオチになっていないことと比べて)。ともあれ制作のあり方やテーマ、表現が有機的に統合している希有な映画だと思う。


1月には、同じ空族/富田克也の『国道20号線』(2006)、『雲の上』(2003)がアップリンクで上映予定。
http://www.uplink.co.jp/x/log/004232.php