解体作業が進む東京海上日動ビル(東京海上ビルディング、設計=前川國男、1974年竣工)。下のは2年前の写真だけど、同じくお堀端、東京海上ビルが中央奥で、右端で見切れているのは谷口吉郎が設計した帝国劇場(1966年竣工)。帝国劇場も2025年をめどに閉館し、建て替えの予定だという。

前川國男と谷口吉郎は東京帝国大学の同級生。下の文の堀口捨己はその10年くらい先輩。

東京のうちで一番きれいな所はどこだろうか[…]。都市計画的にみても、建築という例からみても、あるいは庭園という側からみましても、どこであろうか。この質問に対して、私はもうまっ先に、江戸城の跡である今の宮城の、お堀の辺。あの辺の松の木や、池や、石垣のあいだ。あの辺の所が非常にいいと思うんですね。あそこでこそ、日本らしいということもできますし、優れたものと思うのであります。

  • 堀口捨己「庭園序説」1968年明治大学講義(『堀口捨己建築論集』岩波文庫、2023年)

確かにお堀端はいま訪れても魅力がある。しかしこの堀口の言葉は、現在まさに取り壊されようとしている東京海上ビルディングが建つ前、帝国劇場ができた頃のものだった。いまでこそ東京海上ビルの取り壊しに際して「古い建物を守れ」というようなことが言われるけど、当時お堀端に建設されるこれらの新しい建物について、堀口あるいは堀口ら年長世代の人たちはどう見ていただろう。