昨日はその後、代々木上原の東京ジャーミイ(設計=ムハレム・ヒルミ・シェナルプ+KAJIMA DESIGN、2000年竣工)へ。以前NHKの「ドキュメント72時間」で見て行きたいと思っていたのが、それからもう6年近くも過ぎていた。

現代の宗教建築にありがちなわざとらしさが感じられないのは、オーソドックスな様式で丹念に作っているのみならず、その建物を真に必要とし、日常に根ざして使う人たちが大勢いるからではないかと思う。


下の外観写真は、地面から見上げたときの尖塔の傾きが気になり(上)、ほとんど初めて垂直の補正をしてみた。画面上を広げると建物は横長になり(中)、画面下を狭めると縦長になる(下)。完全に垂直にするかどうかも含めて、プロポーションの感覚や、ひいては個人の建築観までもが試されるような気がする。

こういう操作は建築写真というジャンルに固有の技術的な問題かもしれないけど、「そこに在るものをその実在感まで含めていかに写すか」という意味では、写真の本質的な問題に通じているようにも思える。目に見える(カメラに写る)そのままがリアルかと言えばそうとも限らず、現実に垂直の塔や半球のドームを見る場合には、その像は脳内で幾何学的な垂直や半球の方向に多少なりとも補正されているだろう。撮影者の体験性と図面的な客観性のあいだで、いかに写真として建築を在らしめるか。