最近観た映画2本。コゴナダ『コロンバス』(2017)は、過去のモダニズムの建築(サーリネンなど)が単に時を経て整然として美しいというだけでなく、それらの建築の伝統的な土台のなさが登場人物たちそれぞれの立つ場所の不安定さとしても象徴的に働いている、と言ってみれなくもない。監督は小津安二郎の信奉者らしいけど(コゴナダという名前も小津映画の脚本家である野田高梧に由来するという)、そのあたりのテーマ性も小津に繋がるのではないかと。
もう1本は、ジョン・カーペンター『遊星からの物体X』(1982)。ホラーやバイオレンスを好まずSFにも特に関心がない僕がこの監督の映画には惹かれるのはどういうわけか。監督のウィキペディアには「日本の黒澤明と小津安二郎を敬愛し」と書かれているけど(一番はハワード・ホークスらしい)、もし小津安二郎が生きていたら『コロンバス』よりむしろ(小津の作品からいかにも遠いように見える)ジョン・カーペンターの作品のほうに共感するのではないか。なんとなくそんな気がする。