メディアで「名もなき人々によって〜」というような言葉遣いがされているのを見るとすこしイラッとする。誰だって名前はあるだろう、と。しかしそれが「無名の人々によって〜」だとイラッとしない。その「無名」は「名前がない」という意味ではなく、「有名」の反対で「よく知られていない」という意味だろうから。「名もなき」と「無名」は同じような言葉であっても慣用的に意味が異なる。
ただし、例えば「名をなす」や「名をあげる」の「名」は「有名」「無名」と同じ「名声」という意味の「名」だから、「名もなき」の「名」もそれと同じ意味で考えられるのかもしれない。だとすると「名もなき人々」という言い方にイラッとする必然性はない。「無名」と同等の言葉として受け取ることができる。けれどもやはりほとんどの場合、メディアで使われる「名もなき人々」にはイラッとしてしまう。