テレビで放映していた、ブラッド・バードレミーのおいしいレストラン』(2007)を観た(たぶんテレビ用に相当カットされていたと思う)。ピクサーによるアニメーションで、たぐいまれな嗅覚・味覚をもったネズミが人間社会のレストランのシェフになるという話。ネズミと人間とが会話できたりはせず、ネズミがレストランの厨房で料理することは非現実的であるという感覚を残しながら物語が作られている。そのあたりの現実/非現実の組み立てがよいのだろうなと思った。一方では「誰にでも可能性はある」という基本的に押しつけがましくなるメッセージがネズミを主人公にすることで直接性を消し、もう一方ではファンタジーの世界の豊かさがそのメッセージに裏打ちされることでリアリティを増す。たとえばこの映画と比べると、同じピクサーの『トイ・ストーリー3』(2010年8月20日)は、メッセージのほうが若干支配的になっていると言えるかもしれない。現代の良質な寓話。面白かった。