清水宏風の中の子供』(1937)、『信子』(1940)、『みかへりの塔』(1941)をDVDで観た。どれも面白い。やはり空間の現し方が特徴的で、それは抽象表現という意味でのモダニズムと通じるのかもしれない。そしてそこに映画という形式ならではのスペクタクルを重ねようとする意志が感じられる。演劇の映像化ではない。かといって形式主義的なわけでもなく、感情に訴えるポエジーがある。物語はすべて教条的で説教くさくもなってしまいそうなものだけど、そうならずに生き生きとしている。もしもそうした教条的な筋書きが戦時下の空気に影響されたものだとしたら、それを映画のあり方によって見事に批判していると言えるのではないだろうか。