次号の参考にと、佐藤彰『崩壊について』(中央公論美術出版、2006)を読んだ。次号は『建築と日常』の第2号だが、「大惨事」という特集を予定している。この本の文章はもともと彰国社の『施工』誌(2001年休刊)での連載のために書かれていて、著者もあとがきで断っているとおり、理路整然とした論というよりは気楽に読める随想風になっている。次号で考えているのは建物の「崩壊について」ではなく、あくまで建物と人間との関係のなかでの「大惨事」だから、この本だけで思考を深めるということにはならないにしても、古今東西のエピソードが豊富で典拠もしっかりと書かれているので、なんらかの要素のレファランスにはなるかもしれない。雑誌連載としてはとても充実したものだと思う。
下記、ハムラビ法典からの引用の孫引き(p.101)。

二二九条 建てるを業とする者が他者に家を建て、構造堅固ならずして建てし家が壊れ、家主を死に至らしめたる場合、建てるを業とする者は死を給わるべし。
二三〇条 家主の子を死に至らしめたる場合、建てるを業とする者の子は死を給わるべし。

まさに目には目をで、230条の徹底ぶりがすごい。僕が建築で設計のほうに進まなかったのは、こういう建築の存在の大きさも関係しているかもしれない。そんな責任持てないよという。それが責任を感じやすいのか無責任なのかはわからないが。本をつくるのも文化的に大きな責任を伴うだろうが、その責任はあやふやになりやすいから気楽なものである。
ジュンク堂の大阪本店から追加注文があった。

崩壊について

崩壊について