《菊名貝塚の住宅》(設計=アトリエコ、2021年竣工)を訪問した。もともとシェアハウスだったものをリノベーションした設計者夫妻の自邸。横並びになっていた個室の間仕切りを取り払うことで南北に長い空間を通すとともに、西側1間分の床を剝がしてコンクリートの床下空間と接続し、建築に極端な高低差と外部性を内包させている。
下方のピットとともに特徴的なのが上方の変則的な三連ヴォールト。かなりマニエリスティックにも見えるけど、もし屋根の傾斜をそのまま天井面に出していたとすると、内部空間に下部のピットのほうへ引き込むような方向性が生まれ、身体に圧迫感として作用したかもしれない。三連ヴォールトが天井面を曖昧に分節しながら南北の方向性をもたらし、ピット方向の力を中和している。
道路から階段を上った擁壁側の外部空間の構成にも魅力があり、全体としてあまりリノベーションらしさを感じさせない。自邸としての設計の取り組み方、時間のかけ方とも関係したことかもしれないが、アトリエコの建築の強い形式性が既存の空間とうまく融合している印象を受けた。以下、写真9点。