エリック・ロメール『モンソーのパン屋の女の子』(1963)を観た。23分。短編と長編は量だけでなく質的にも区別されるものだろうか、短編らしい短編だと思う。具体的であり抽象的でもある人間/都市のスケッチに、ロメールのモラリスト的性格を思う(『モンソーのパン屋の女の子』は連作「六つの教訓話 six moral tales」の第1作)。以下、最近買って読み始めた本(大塚幸男『フランスのモラリストたち』白水社、1967年、p.14)より。

──つづめていえば、モラリストとは、人間をその日常生活において観察し、描写して、とりわけ人間の心理的動きを直観的に探究し、永遠の人間(永遠に変わらない人間)のあり方、人間の条件を示して見せ、それによってムルス[※一個人の話し方ないし行動の仕方]を矯正しようとの配慮ないし念願をも内に秘めている作家のことであり、究極のところ、言葉の最も深く高い意味において、人間いかに生きるべきかの問題を探究し、その問題に思いをひそめる人々のことである。
 モラリストの作品の形式は、多かれ少なかれ短く、最も短いのは一行、長いのは数ページ以上におよぶこともあるが、いずれの場合にも圧縮されて、彫琢の域に達しており、示唆的で、ゆたかな瞑想の種となるものばかりである。