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『ホンマタカシ きわめてよいふうけい』(リトルモア、2004年)の表紙をめくった最初の見開きの写真(その写真集の主役である中平卓馬らしき人が道から川を眺めて小さく写っている)と同じ位置に立って撮った写真。晩年の中平卓馬が日々自宅の近所で写真を撮り歩いていたというその場所が、去年僕が越してきた家の隣町と言ってもいいようなところにあったことを、大竹昭子『眼の狩人』(新潮社、1994年)を読んでいて知った。

写真集『来たるべき言葉のために』の中に早渕川を撮影した写真がある。この写真集におさめられた写真を中平はほとんど否定しているが、橋の上から川の流れを正面にすえて撮ったこの一点は認めている。この川で生き直したからだという。(同書p.90)

今年の正月の日記で、「だから理想としては、いつまで経っても撮り尽くすことなく、日々の散歩のなかで延々と撮り続けていけるように写真を撮れるようになれたら、と思う。」と書いたけど(1月1日)、考えてみると中平卓馬は近所でそれをやっていたのだった。今日はじめて行った早渕川の周辺はまだ魅力的なひなびた風景が残っていて、そのうちあらためて写真を撮りに訪れたいと思った。