坂本一成先生の論説集『建築に内在する言葉』(編集=長島明夫、TOTO出版、2011年1月20日刊)が、今日でちょうど刊行10周年。大学の定年退職を記念した企画で、出版パーティーも予定されていたのだけど、その数日前に東日本大震災が起こり、パーティーも中止になったのだった。

その本もいつからか出版元で品切れになり、現時点では「日本の古本屋」でも1冊もなく(ヤフオクでもメルカリでも)、Amazonだと古書の最安値が1万円弱と、かなり手に入りづらくなっている。古書の品薄と価格の高騰は潜在的な需要の裏返しでもあるはずだけど、今の雰囲気からして今後の増刷は期待しにくい。
書き下ろしの序を除いて、収録されているのは過去に雑誌等で発表されている文章だけど、単行本化の際に校正には相当力を入れたので(僕のこの本での仕事はほとんどそこだった)、図書館で元の雑誌を当たるのなら、この本を借りて読むほうがよいと思う。初出時の文章との異同を確認する学術的な意味もたぶんあまりない。ただし特に第2部は、元の雑誌掲載のときのほうが図版が充実しているところがある。
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