NOBODY毎年恒例の年間ベスト企画。

荻野洋一さんが挙げている、マリオ・プラーツ『生の館』(上村忠男監訳、中山エツコ訳、みすず書房、2020年、原著1958年)に興味を惹かれる。「蔵書と美術品に彩られた自宅という記憶の森を600ページ以上にわたって語り尽くす。まさにステイホームの金字塔的な、狂気の大著である。」

「生の館」(La casa della vita)は「生きられた家」と言い換えてもよいのかもしれない。実際、多木浩二は『生きられた家──経験と象徴』でマリオ・プラーツを参照している。「マリオ・プラーツは、部屋や家具の文化を辿りながら、きわめて明確に、家は人なりという古いことわざを肯定している。かれは「あなたの家がどのように見えるか言ってごらんなさい。あなたがどんな人間か話してあげますよ」とも書いている。」(岩波現代文庫、p.101)
ただ、そういう抽象的なレベルで興味を惹かれるとしても、具体的なレベルで本書を埋めているだろう数多の事物、その固有名の嵐に果たして立ち向かえるのかどうかという懸念がある。本体8,800円。まあとりあえず今度都会の本屋へ行ったときに探してみよう。