ポン・ジュノ『パラサイト 半地下の家族』(2019)を池袋HUMAXシネマズで観た。新型コロナの影響でガラガラかと思ったけど、意外と人がいた。
ここ最近、ポン・ジュノの映画をよく観ている。制作年順に『ほえる犬は噛まない』(2000)、『殺人の追憶』(2003)、『グエムル -漢江の怪物-』(2006)、『TOKYO!』(2008)、『母なる証明』(2009)、『スノーピアサー』(2013)、『オクジャ/okja』(2017)。『ほえる犬は噛まない』と『TOKYO!』は今一ぴんと来なかったけど、今日の『パラサイト 半地下の家族』も含めて、どれもエンターテイメントとして非常によくできていると思う。飽きさせず、引き込まれる。
『パラサイト 半地下の家族』は途中まで『しとやかな獣』(1962)を強く思い起こさせたけど、他の作品においても、たとえば黒澤明や今村昌平、新藤兼人など、かつての(リアリズム系の?)日本映画と似た雰囲気が感じられる。ただ、そうして貧困や社会問題、人間のドロドロした欲望や土着的なところを好んでテーマにする一方、構成は知的・技巧的で洗練され、良くも悪くも重たくない。扱っているテーマのわりに思想的な深みはあまりなく、そのぶんエンターテイメントとしての完成度が高い。だから僕個人にとっての特別な映画にはなりにくいけど(たとえばホン・サンスの映画のようには)、このレベルのエンターテイメントが世の中に普通にあることは豊かなことに違いない。上記の作品のなかでは、比較的初期の『殺人の追憶』に、作品がまだ完全に技巧で制御される前のなまなましさのようなものを感じた。