テレビで放送していた、片渕須直『この世界の片隅に』(2016)を観た。3年前、映画館での公開時にも観た作品。そのときの日記では、「それぞれの要素が作品世界として全一的に統合されておらず(内的な秩序に根ざしておらず)」と批判しているけど(2016年12月11日)、今あらためて考えてみると、そもそもアニメ映画で作品世界の全一性を感じさせるというのはかなり困難なことかもしれない。アニメは実写と違って、ひとつひとつの場面をゼロから描いて立ち上げているため(かどうかは分からないが)、その描かれた場面以外(場面と場面のあいだ)の背景ないし媒体としての世界は、観客に実感させづらいという性質を持っているような気がする。僕が3年前にこの映画を批判したのは、具体的に言って例えば終盤、主人公が激高したり、「この世界の片隅に私を見つけてくれてありがとう」と言ったりする行為に、生きた人間のリアリティが感じられないというようなことからだった。そういう印象は今回も変わらない。