電車に乗ってぼんやりしていると、夢をもつことの大切さを若者に説くような広告が目に入った。新年度というせいもあるのかもしれない。その広告自体の浅はかさはともかく、「夢をもつことの大切さ」という一般に信じられている観念についても、全否定したいとまでは思わないけれど妙に引っかかってしまう。「明日に頼らず暮らせればいい」(佐藤伸治)とか、「人類が最後にかかるのは、希望という病気である」(サン=テグジュペリ)とかいう言葉に共感するためだろうと思う。たとえば「夢をもつことの大切さ」よりも「理想をもつことの大切さ」のほうがぴんとくる。