渋谷のユーロスペースで、片渕須直この世界の片隅に』(2016)を観た。評判のアニメ映画。上映30分前に行ったらちょうど立ち見のチケットが完売したところで、さらにその次の回を観ることになった。原作の漫画は読んでいない。非日常としてではなく日常として戦争を描く、というものだという前知識がなんとなくあって観たのだけど(学生のころに書いた文章()を思い出す)、そのことが作品のコンセプトになっているのは伝わってくるものの、コンセプトの域を超えて作品世界のリアリティを獲得するまでには至っていない感じがした。断片的にすぐれた表現はあるにせよ、それぞれの要素が作品世界として全一的に統合されておらず(内的な秩序に根ざしておらず)、人物の存在も時間の経過や出来事の連なりも、どこか操作的な印象を受ける(それは原作を映画の尺に合わせるため間引いた結果ということでもあるかもしれないし、それぞれの細部にこだわった結果ということでもあるかもしれない)。