『建築家・坂本一成の世界』のページ見本。《代田の町家》と《宇土市立網津小学校》、どちらも上が服部さんのデザインによる完成形で、下がデザイン入れ時点の編集者による仮レイアウト。




この作品集では全体で決まったフォーマットを設けず、写真、図面、テキスト(①長島による書き下ろしの作品解説 ②坂本先生の過去の文章の抜粋 ③他者の批評や考察からの抜粋)を、それぞれのページ/作品で有機的に関係づけてレイアウトがされている。というよりも、そのレイアウトをインデザインを使って調整しながら、写真をセレクトしたり(そこでは写真の掲載料などの現実的な問題も介在してくる)、既往の文章の抜粋を検討したり、作品解説を執筆したりしている。それは編集上どうしても必要な作業だったので、まずそうして僕のほうで仮のレイアウトを作成し、それをそのままインデザインのデータで服部さんに託すような制作のプロセスをとった。バラバラなものを単に見栄えよく整えるというのではなく、バラバラなものをバラバラであるからこそよいと思えるようなデザインを、服部さんにならばしてもらえると思った。
9月の青山ブックセンターでのイベントでは、このあたりの画像もスクリーンに映しながら、編集やデザインの意図、制作のプロセスなどについても話ができたらと思っています。

ちなみに《代田の町家》の多木浩二さんによる写真はおそらく今回の作品集が初公開です(9点掲載)。これまで多く使われてきた(別冊『多木浩二と建築』の裏表紙でも使用した)35ミリのカラーポジとは別に、『プロヴォーク』期を思わせるモノクロの紙焼きが数十枚ありました。なぜこの写真が使われずにいたのか不思議に思えるくらい、むしろこちらのほうが多木さんの真骨頂という気がします。
坂本先生の作品を紹介する既刊の書籍や展覧会カタログは、海外で出版されたものも含めて少なくないですが、『建築家・坂本一成の世界』では内容的に無理がない範囲で、なるべくこれまであまり使われていない写真を載せるよう努めました。それは写真家やそのご遺族の方々の協力もあって、ある程度達成できたと思います。