THE TOKYO ART BOOK FAIR 2012の3日目(最終日)。11〜18時の7時間で、販売24冊(窓の観察=14冊、No.2=6冊、No.1=4冊)。雨だったのでお客さんの入りを心配していたのだけど、最終日の日曜ということで会場は盛況だったし、雑誌もいちばんよく売れた。ただ、売れたのは僕が販売に多少慣れてきたせいもあったかもしれない。3日目にしてようやく、最初にお客さんに話しかける言葉が「個人で建築雑誌を作ってるんです」に固まり、それをきっかけにしていくらかスムースに話を展開させることができるようになった気がする。誰にでも同じ言葉で話しかけるというのは形式的といえば形式的だけど、やはり形式にもそれなりの意義がある。
3日間の販売の合計は49冊(窓の観察=31冊、No.2=10冊、No.1=8冊)、売上げの合計は50,895円だった。参加費の15,750円を計算に入れると、だいたい掛け率70%で書店に卸すのと同じくらいの利益率ということになる。といってももちろん普通に書店に卸したのでは買ってもらえないような人に買ってもらえたと思うので、有意義ではあった。それと、もともと『建築と日常』のことを知っていて、それなりに関心を持ってくれている人も少なからずいたけれど、そういう人でもNo.2が出ているのを知らなかったりする、ということをあらためて認識させられた。やっている自分にとっては大きなことでも、読者にとっては(たとえその人がそれなりに共感してくれるような人でも)そうでもないということは、いつも心に留めておくべきだと思う。それは共有の不可能性ということでは必ずしもなくて、たとえばNo.2は刊行してもうだいぶ経つし、今更宣伝しづらいという気持ちがなんとなくあるのだけど、そうあまり自分で勝手に思い込まず、むしろ共有しようと粘り強く努めるべきではないかということ。
昨日今日と、僕が店番をしているあいだ、qpさんのファンという人が少なからず、たぶん10人以上は訪れた。qpさんも店番をしていたことを伝えると、多くの人は会えなくて残念がっているようだった。ただ、会えたほうがよかったのか、会えなくてよかったのかはわからない。qpさんは、主な作品発表の場であるネット上では顔写真も出していないし、年齢や性別さえ定かではないような、ミステリアスな雰囲気を漂わせている。ネット上でしかqpさんを知らない人にとってみれば、実際のqpさんがどんな人であれ、自らの想像との差を感じざるをえないのではないだろうか。『窓の観察』を買ってくれた20代前半くらいの内気そうな女性に「建築関係の方ですか?」と聞いたところ、その人はすこし含羞んだ様子でうつむいたまま表紙のqpの文字を指さした。ああいう感じの人にああいう感じで届いているqpさんの活動はすばらしいと思った。