能作文徳建築設計事務所+千田友己《STEEL HOUSE》を見学。中央線を西へ行ったのに、駅から歩いてこの家に着くと、なぜか南のほうへ来たような感じがした。海に近い地元へ帰ったときのような、どことなく懐かしい感じ。その理由はよくわからないけど、塀と前庭、全面開口の縁側的なアプローチという構成も関係しているかもしれないし、あるいは単に今日の気候のせいと言い切れなくもない気もする。室内から見える隣のブロック塀もなんとなく懐かしい。
道路→塀→前庭→2層吹抜の主室→3層の各室、という構成は巧みで、奥の2階から主室を通して道路に抜ける視線はとても快いものだった。道路との間に塀を立ててはいるけれど、あるいはファサードは全面ガラス張りではあるけれど、外と中との距離感は品よく保たれている。
ただ、そうした空間同士の関係が優先されたのか、吹抜の主室は、そこだけで見ると床面積に対して天井がすこし高すぎる印象。また仕上げの面で、鉄骨の亜鉛ドブづけや、建具や家具にも使われているむき出しの構造用合板(やたらと節が多い)は、能作さんによれば「即物的であること」の表現も意図していたようだけど、ちょっと目にうるさい。竣工したばかりで空っぽの状態であるから余計にそう感じるとしても、即物性を主張しすぎて却って表現的になっているようにも思えた。とはいえこの2点はそこまで気にかかることでもない。グリッドの重視にしても単純な素材の組み合わせにしても、理性的な若々しさが感じられる住宅だった。